沈思黙考
地方自治体の行政計画
林 謙治
1
1国立保健医療科学院
pp.828
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101935
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10年前あたりから地方自治体の行政評価が始まった.背景として財政の逼迫があるため,行政評価といえば予算カットが前面に出ており,今日の「事業仕分け」の作業から受ける印象につながっている.そもそも行政の目的は地域での安心・安全な生活,文化的・経済的に豊かな生活を可能にするために税金を投入する作業である.したがって,無駄や非効率な事業を見直すことは重要であるが,同時にどのような事業に着手し,あるいは改善するか,優先順位を決めて提示する責務がある.その際着手した事業のゴールを示す指標が「ベンチマーク」である.
ミネソタ・マイルストーンでは,「人」「コミュニティーと民主主義」「経済」「環境」の4分野70項目をベンチマークとして掲げ,毎年実測のデータを郡別にインターネットを通じて住民に提示している.しかしながらそれぞれの指標は市民生活にとって重要であっても,行政の業務努力を指標の到達度で測定するのは必ずしも容易でない.例えば,ミネソタ・マイルストーンでは「人」指標のなかに「予防接種率の増加」がある一方,「10代の妊娠や自殺率の減少」がある.予防接種率の増加は衛生部門の努力により短期間内に達成できる見込みがあっても,10代の妊娠や自殺率の減少は衛生部門の努力のみで達成できるほど内容は簡単でないことは容易に想像がつく.
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