事例 保健指導を科学する・7
保健婦活動の事例をもとにした社会学,社会心理学,臨床心理学的な考察
事例—結核患者管理についての反省
岡林 佐和子
1
1高知県安芸保健所
pp.74-75
発行日 1966年8月10日
Published Date 1966/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203725
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結核患者管理でたいせつなことは個々の患者を治療により治癒させることと,周囲への伝染防止をはかることを目的としているが,この両方において失敗していると思うケースの経過を述べます。
訪問目的は入院勧奨。まず患者Mの家庭環境はこの市のなかでも特に悪く,保護率も人口千対290と非常に高率で,なお同和地区というハンディを持った所です。M(男子41歳)はその容貌のためか通称鉄仮面というあだ名で,人々に知られている。学歴は小卒で,家族構成は養父母の3人家族で,Mのみ単独世帯となり生保を受け,食費として月2千円を養母に渡している。また妻も3人程娶るも皆逃げ帰っている。親子関係では特に養父は,「失対で働いた金がMの酒代になる,いっそ警察問題でも起して当分帰って来れなくなればよいのに」と,こぼしている。家屋は平屋建4畳半1間と3畳で周囲は同じような低い家屋がびっしりと並んでいる。家族の健康状態は良好で,SPで異常なし。
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