特集 結核
勞働者結核問題の反省
黑田 芳夫
1
1勞働基準督監
pp.38-41
発行日 1950年1月15日
Published Date 1950/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200571
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1.罹病率,死亡率
戰後,結核豫防對策のめざましい進歩が語られている。死亡率の減少はことに著しく,青年期結核死亡のヤマがだんだん低くなつて歐米のような老人期だけのヤマの型に似て來つゝあるという。實にうれしいことだ。
だが,これが必ずしも社會生活における結核問題を一擧に解決するものとは速斷できない。勞働--社會通念的にいえば生活のために努力すること,これが人間の本姿である。そこでは常に強じんな精神と肉體とが要求されている。働けるか否か,それが人間生活を營み得るか否かの大前提である。この前提があるからこそ,僅かの下痢や鼻カタルやケガを無理して醫者にかゝらずに治そうとする。健康保險を利用する者が激増した,とはいつても一回の治療ですむ位の輕症が激増したのではない。半日の,いや1時間の醫者通いが勞働者には氣輕にはできない。茲に結核死亡率の減少を以て素朴に勞働生活えの好影響とのみ言い難い理由がひそんでいる。
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