特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
麻酔に関する反省
稲本 晃
1
,
渋谷 欣一
1
1京都大学
pp.703-708
発行日 1962年8月20日
Published Date 1962/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202935
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近年麻酔管理が進歩すると共に,次第に手術の適応は拡大し,ために従来は到底手術不能とされた重症患者にも,メスが加えられて救命的効果が期待されるようになつたことは喜ばしいことであるが,一面われわれ麻酔医の手に任せられる患者も,一般状態の重篤な麻酔導入さえも困難な症例が多くなり,われわれの精神的負担も責任もいよいよ重大になりつつある.
もとよりわれわれの使命は,安全を第1とし,たとえ一万例の中で一例でも麻酔が原因となつて失われる生命があつてはならないのであるが,一方最近筋弛緩剤,静脈麻酔剤の普及により,気管内挿管はもはや安易な手技となり,なんらの顧慮も慎重もなく,不用意に行われる傾向があることは,厳に戒しむべきことである.ここに私共が京大中央手術部で行つた最近2年間約4000例の大手術に対する麻酔管理の経験から,気管内挿管および気道確保,循環系維持等の諸点において特に困難であつた症例,あるいは失敗例を,数例選び出して,その検討と反省について述べたい.
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