びぶりおていく
精神衛生活動の手引き/看護の思想
中川 四郎
1
,
木下 安子
2
1国立精神衛生研究所・国立国府台病院
2東大保健学科
pp.60-61
発行日 1966年8月10日
Published Date 1966/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203720
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わたしは以前から日本に精神障害者のしっかりした医療管理体系ができていないことを痛感していた。昭和25年制定の精神衛生法に基いて各都道府県,政令市に精神衛生相談所を設けることが定められたが,これは任意設置であることと,その業務規定が明確でなかったことに加えて,二,三の施設を除いては十分な予算人員が伴わずその機能を発揮できないでいるところが多く,しかも精神衛生というと,とかく子供のしつけとか,青少年の非行とか,ノイローゼなどが強調され,狭義の精神疾患は故意に避けていたような傾向があった。それにはそれだけの理由があるが,わたしの勤めている国立精神衛生研究所の数年前までの姿勢とも関係があるようにも思う。
わたしは精神障害者の地域での医療管理には,現在の組織の中では保健所が第一線機関とならなければならないことをかねがね強調していたが,従来の保健所業務のわくのなかでは,患者の申請通報などのごく一部を除いて法的な根拠を持っていなかったことと,保健所の方がたの精神障害に対する理解の不足からそれが実現しなかった。数年前小坂君はこの困難な状況のなかで,栃木県精神衛生相談所長として保健所を中心とした精神障害者の管理体系の確立に全力を傾倒して画期的な成功を収めたのである。
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