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地についた衛生思想の普及を
沢口 美恵子
1
1三日町保健所
pp.69
発行日 1958年5月10日
Published Date 1958/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201643
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今日はAさんの家庭訪問.「考えなおしていればうれしいが」と思わずつぶやいてしまう.訪れるとAさんは「熱が出ている」と例の窓もない納屋改造の室に臥せていた.この室ではよい療養は出来ないと思い外気小屋の使用を奨めているが,婚期の娘さんがあるので世間体を気にしてか受けつけない.
Aさんは昭和22年夫と同時に結核となり,夫は28年に死亡してしまつたが,幸にもAさんはその後軽い仕事を出来る状態となったが,昨年秋の一般住民の健康診断で再び病状が悪化しているのを発見され経済的な理由で自宅療養をしているのである.昨夜は「力添えして下さい.婚約者の姉が結核であると噂が立つて自分達の結婚が破談になりそうだ」と訪れた青年があつた.当人同志が健康であればと健康診断の交換を奨め最近の結核治療の進歩を話して励ましてあげたが,まだまだ一般の人々は結核を不治だとか,血統だとか考えているらしい。いや多少理解している人もその立場となると結核に対する憎悪と恐怖のトリコとなつてしまう.
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