私はこう思う シンポジュウムをきいて
思想を忘れた衛生行政
左部 勝
1
1苫小牧保健所
pp.55-56
発行日 1964年1月15日
Published Date 1964/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202787
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この頃,公衆衛生にたずさわるものの間に,欲求不満を主徴とする,いわゆる「あり方病」若しくは「あるべき病」が流行しつつあることは重要視しなければなるまい。その意味で今回のシンポジウムは,各演者らの大変な努力により,いろいろな立場から問題点を整理され,その対策の足がかりを示されたことは意義があり敬意を表したい。ただ,運営の面で折角の資料が参加者にゆきわたらず活用されなかったためもあろうが,1億の人間の目が保健所にむくよう,2億の瞳でみられるような保健所になることを常に意識し歩むところに,明日の日本の公衆衛生の進展があるのだという共通の現解の上にたった討議が余りなされず,このシンポジウムは「保健所はどうすれば地区のニードにこたえられるか」ではなくて「厚生省はどうすれば保健所のニードにこたえられるか」ではないかという声もあったように,パイオニア精神の欠けた欲求不満調なものになり,相互信頼の上にたたない論議は得るところが甚だ少ないといわれるが,そんなシンポジウムになったことは些か残念であった。
保健所活動の進展は地域住民の利益と一致しなければならない。
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