クラビア
黒い霧—スモッグに挑む
pp.2-8
発行日 1965年11月10日
Published Date 1965/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203494
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"美しい国、日本。その自然は、人びとに幸を与え、心に安らぎを与えつづけてきた。しかし、人びとの営みは、自然の姿をすっかり変えてしまった。"という出だしではじまるこの映画は、工業の発展にともなう公害の増大、とくに大気汚染は、そこに住む人びとの衣食住の生活はもちろん、人体そのものに大きな影響を与え深刻な問題となっていることを訴える。このほど完成した記録映画「黒い霧—スモッグに挑む—」(学研映画製作、カラー3巻)は、この大気汚染の実態をカメラにおさめ、バイジンと有毒ガスによる恐ろしい害毒の姿に、いろいろな視点からメスを加え、その技術的打開策を紹介している。
東京、大阪などの大都市で生活する人びとは、大量のバイジンの中に息づいているといってもいいすぎではない。バイジンの降下量は、東京で月平均1平方キロ当たり26トン、大阪で同じく19トン、トラックなんばい分かに当たるバイジンが絶えまなくまき散らされているという。大きな煙突の群れからは、不完全燃焼の黒い煙、酸化鉄の粒子を含んだ赤い煙、有毒性の黄色煙などがはき出され、工場地帯だけではなく、時々真昼でも夕暮れのような景色を街全体につくりだす。この黒い魔女といわれるスモッグの人体への影響は大きい。人びとは、この汚れた空気を1日中平均12,000リットルずつ吸っているからだ。工業都市大阪に住む人の肺臓は、農村に住む人のそれと異なり、明らかに黒いシミが多い。
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