野巫医のたわごと
(180)霧と霞
前田 貞亮
1
1前田記念腎研究所理事長
pp.124-125
発行日 2015年5月10日
Published Date 2015/5/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.05_0124-0125
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“今日は晴れ,午前中は所により「霧」の濃い所もあります。車の運転には十分気を付けて下さい”ラジオからアナウンサー,あるいは気象予報士の声が聞こえてくる。ラジオの歴史90年の2015年3月初め,ラジオ人間の筆者にとっては一寸奇異な感じを持った。ハテ?「霧」は秋の言葉ではないのか,空気中の水蒸気が凝結して細かい水滴となり,白い煙のように見えるもので,「春は霞,秋は霧」と教えられてきたように思う。広辞苑第1版(1956年)は「水蒸気が寒冷にあって凝結し,微小な水滴となって大気中に浮遊し,煙のように見えるもの。古くは春秋共に霞とも霧ともいったが,後世春立つのを霞,秋立つのを霧といった。」,第2版(1981年)では「地面や海面に接した気層中で水蒸気が凝結し,無数の微細な水滴となって大気中に浮遊し煙のように見えるもの・・・(後略)」,第3版(1983年)からは少し変わって,「古くは」という所を「平安以降,春立つのを霞,秋立つのを霧と呼び分ける」とした。そして第5版(1998年)からは表現に自然科学的な定義を加えてある。即ち「地面や海面に接した気層中で,水蒸気が凝結し,無数の微細な水滴となって大気中に浮遊し・・(中略)・・,春立つのを霞,秋立つのを霧と呼び分ける。気象観測では水平視程が1km未満の場合をいい,1km以上は靄という」と定義され,「霞」という字は気象学の用語から消えた。
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