読者からの手紙
喜びをかみしめて明日もまた
鈴本 政江
pp.9-10
発行日 1965年11月10日
Published Date 1965/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203495
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部屋の人たちが帰った後の机の上には,昼間働きつづけた電話がポツンポツンと置かれているのと,けしごむのくずが残されているだけです.なんの抵抗もなく,希望どおりに事業所に就職して,はや3年めをむかえ,この机とともにと思うと,まだ,やらねばならぬ仕事がいっぱい,つぎからつぎへと仕事が浮んできます.先輩もいず,右も左も上も下もわからないまま,夢中で,その日,その日を送った最初の1年が思い出され,今でも心を強くしめつけられる思いです.それは,ちょうど,泳ぎのできない子どもが溺れることを恐れ,手足をバタバタさせ,とにかく溺れぬように,ハイ上がっているのと同じです.
やっと2年めをむかえた時,最初の年に手にした仕事のいくつかが整理されていくのをみて,自分のしている仕事の重大さを知るとともに,その責任の重さに自信を失うことたびたび,泣いたり,喚いたり,しかし,ころんではおき,ころんではおきして,1年めより2年めと,より充実した仕事へとがんばりとおしました。万全の医療設備のあるところにポンと放り出され,保健婦などいらぬではないかとつねづね思うと同時に,一方ではもっと保健婦の活用を願いつつ,自分ではどうすることもできぬ組織の中で,じたばたすることばかりです.そして,手をつくせばつくすほど仕事の範囲は限りなくせばめられるばかりでした.
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