特集 医療と公衆衛生
国民の健康の現状と医療制度
住民に支えられた共同保健計画の推進こそ急務
小島 武雄
1
1宮城県宮黒保健所
pp.27-33
発行日 1965年3月10日
Published Date 1965/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203328
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
地についていない日本の公衆衛生
国民の健康がどう守られているかという命題はきわめて漠然としており,ひじょうにむずかしい問題である.現行の医療制度のもとでは,種々さまざまな要素,要因によって,国民の健康が十分守られていないし,保健所もまた国民のヘルスサービス第1線機関として存在しているが,同様にさまざまな要因によって,その機能を十分発揮し得ないでいる.私は保健所の立場からこれを取りあげ,私なりの見解を述べてみたい.
公衆衛生の歴史をみると,欧米先進諸国と日本のそれとはひじょうに違っている.医療に関しては日本も古い歴史をもっているが,公衆衛生の歴史はきわめて浅く,実際には昭和12年に保健所法がつくられてからのことであり,それも戦前は強兵作りが主体であり,ほんとうの意味の公衆衛生は,戦後アメリカ進駐軍によって教えられたようなものである.しかしながら,日本の公衆衛生も急激な発展をとげ,独自の公衆衛生が打ち出され,従っていろいろな問題が提起されるようになったのはとうぜんのことであろう.特に,日本の公衆衛生はその特色として,医療とはあまり関係なく(広い意味ではあるとしても)発展してきたことであろう.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.