健康と社会IV
地域の社会,経済的条件と健康問題
篠原 武夫
1
1東京医科歯科大学国府台分院
pp.69-72
発行日 1963年7月10日
Published Date 1963/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202888
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(一)
世界保健機構(W. H. O.)憲章がその前文中で,「健康とは疾病または病弱の存在しない状態ではなくて,身体的,精神的および社会的に完全に良好な状態である」と定義しているのは,健康の積極的・能動的な規定としてあまりにも有名である.これは健康というものが表面的な程度の問題としてではなく,より積極的に社会性を持った価値概念として把握されているところに,この定義の歴史的意義を見い出すことができるからであろう.
ところで,「社会的に良好な状態」というとき,われわれはそこに二つの意味をくみとることができる.すなわち,一つは個人がその有する能力をじゅう分に発揮することによって,社会的環境に適応しつつ,毎日の生活を持続するという意味である.この意味で健康とは「肉体的精神的に通常の社会生活を営みうる状態*」ということができるであろう.それはいわば,個人の社会的健康とでも規定しうるものである.
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