健康と社会III
健康を規定する社会的条件―健康問題と家族の役割
波多野 梗子
1
1東大医学部公衆衛生学教室
pp.65-68
発行日 1963年6月10日
Published Date 1963/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202863
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1.家族の社会学的,心理学的意義
家族とはいったい何か.社会学や心理学では家族をどう定義しているであろうか.まずこれをはっきりしておかないと,健康を規定する要因としての家族の役割を論ずることはできない.はっきりしているようで,学問的には家族の定義はまちまちである.しかし一般には,「家族とは夫婦を中核として,その近親の血縁者が住居をともにして生活している小集団である」と定義される.血縁者が住居を異にしている場合でも,家族員であるという意識がある場合は家族にみなされる.これに対して血縁でない者が同一の住居に含まれる時,あるいは家計をともにしているとき,これは世帯と呼ばれる.公衆衛生で対象にしている場合は,往々にして家族と世帯が混同して用いられているようであるが,要は,家族とは,それが血縁集団,あるいは第一次集団といわれるように,結婚,およびその間に子どもが生れることによって,心理的きずなでしっかりと結ばれている.ということである.そこでは,おのずと,家族員の生活,態度,行動はその家族のもつ特質や,他の家族員により影響されている.したがって,ともに生活してきた,あるいはともに生活している家族を無視して,その人の考え方,行動のしかたを説明し,理解することはできない.
同時にまた,家族員はその家族のおかれた社会的・文化的状況の中で,それらに影響されて考え判断し,行動することになる.
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