コンタクトレンズ(43)
教科書作りの苦心
長谷川 泉
pp.62
発行日 1963年7月10日
Published Date 1963/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202883
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「図書」6月号に,国語学者西尾実博士が岩波書店の国語教科書出版についての回顧をしている.西尾博士は,岩波書店が発行した旧制中学校の国語教科書の編者のひとりであり,その仕事を通して知った岩波茂雄の出版方針についての感銘を述べているのである.
この国語教科書は.昭和9年に文部省の検定が通過したのだから,実際に使用されたのは,多分昭和11年からであろうか.私はこの文章を読みながら,私自身が中学時代に習った国語の教科書のことを思い起こした.それは落合直文・金子元臣という明治時代の有名な国文学者の編んだもので,国語の教科書としては古典的なものであった.今でも,その当時に国語教科書で学んだ文章を暗記しているから,感じやすい年ごろに精神の糧となったものは,生涯ずっと長く尾を引いて影響力の大きいことを痛感する.
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