手こずつた症例
胃切除後における輸血,輸液の苦心症例
高山 坦三
1
,
福井 四郎
1
1札幌医大外科教室
pp.1155-1160
発行日 1962年11月20日
Published Date 1962/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202994
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患者に手術治療を施すわれわれ外科医は,たえず不慮の危険の偶発を覚悟していなければならない.患者の家族歴をはじめ既往歴を十分に聴取し,考えうる必要性に応じて周匝な諸検査をおこなつて病名を診定するのみならず,それと同時に患者の生理機能についての十二分な知識をもつて手術にのぞんでも,なおかつ手術所見はつねに必ずしもわれわれの診断と完全に一致するとはかぎらず,さらには手術中において,あるいは手術直後,さらには手術後数日を経過したのちにおいても,予測しなかつた不慮の事態が発生してわれわれ外科医を悩ませる.これらの問題について絶えず反省するとともに,これを検討して次回への対策を練ることによつて,われわれの経験は生きた体験となつてわれわれの血肉となり,われわれを外科医として成長せしめる.編集者が「私の経験した診断と治療上の困難症」というテーマによつて本課題を真摯にとりあげた所以もまたそこにあると思う.
われわれはここにわれわれの経験したこれらの症例の2,3を紹介して,諸氏の参考にしたいと思う.症例1は後出血,症例2は術後ショック,症例3は術後低カリウム症のそれぞれ症例である.
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