健康と社会II
健康を阻害する社会的条件—社会の生活慣行を保健社会学からどうみるか
柏熊 岬二
1
1大正大学・社会病理学
pp.69-72
発行日 1963年5月10日
Published Date 1963/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202844
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1.生活慣行のもつ意味
生活慣行とはいかなるものをいうのであろうか.一口にいうならば慣習化された生活様式である.およそ人間というものは生きていくための手段としてさまざまの生活様式--文化といってもよい--を身につけなければならないが,それは長い歴史の過程の中で次第に慣習化され,一定の型ができてくる.日常生活の3本の柱である衣食住にしてもそうであるし,子供の育て方や妊娠時の過し方などにしてもそうである.いわば生活の中から生まれてきた人間の智恵といってもよいだろう.
ところでこのような生活の型,すなわち生活慣行は,われわれの社会生活のそれぞれの場を単位としてできあがる.家庭には家庭の生活慣行があるし,地域社会には地域的な慣行が存在する、関東とか関西とかの広い地域--地方--を単位とするものもあるだろうし,日本特有の生活慣行もあるはずである.さらには同じ地域の中に上中下の階層による慣行が生まれることもあるし,職業による型も見逃せないであろう.もっと細かくいうならば,各個人による生活慣行もないことはないのである.そしてこれらのいずれもが,われわれにとって大きな意味をもっている.文化人類学的な見方をすれば,人間の性格なり,ものの考え方なりの,いわゆるパーソナリティーはどのような生活様式の中で育ったかによって決定されるのである.
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