特集 患者の情緒的要求と看護
精神病者の情緒的欲求と看護
小林 八郎
1
1国立武蔵療養所医務課
pp.22-26
発行日 1961年6月10日
Published Date 1961/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202342
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
他人の情緒的欲求は,その人の表情や行動や態度や発言からおしはかつて知ることができる、どうしておしはかることができるかといえば,自分にも同じような経験があつて,他人もだいたい自分と同じようなものだということがわかつているからである.つまり,ある程度は他人を理解できるということが前提になつている.
人間どうしの間に理解がない場合には,情緒的欲求の存在することをおしはかることはむつかしい.ある種の精神病者の心をわれわれは理解することができない.もちろん,その疾病そのものや症状を精神医学の教えるところにしたがつて知ることができるとしても,彼の心を理解することのできないことが多い.医学的治療は症状の有無を目標としておこなうことができるからやさしいが,人間としての彼の心がわからなければ看護として十分なことはできない.彼の欲求を知り,それをみたしてあげなければ看護としての意味はないわけである.
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.