特集 患者の情緒的要求と看護
妊産婦の情緒と看護
木下 正一
1
1賛育会病院
pp.27-30
発行日 1961年6月10日
Published Date 1961/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202343
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■産科学における人間性の再認識
私たちが産科学や助産学を学んだころには,「妊婦の情緒」などについてはほとんど何も学んだ覚えがありません.大ていの教科書をひらいてみると,「妊娠が妊婦の全身に及ぼす変化」という項目のところに,
精神状態もまた変移しやすく,その多くは憂うつ性となるも,これに反しで快活となるものあり,また分娩に対して恐怖心を起こすものあり
という程度にしか記してありません.考えてみると,助産学という学問においては,人間の情緒などはほとんど問題視していなかつたのだと言うことができるでしよう.
ところが最近になつて,妊婦の情緒ということが重要視される傾向になつてきました.その傾向を明らかに示すものとして,英国のリード氏の唱えた「恐怖のない自然分娩」や,ソ連の「精神予防性無痛分娩」などを指摘することができます.この両者は,学説はそれぞれ相違するところがありますが,いずれも人間の精神活動が分娩時の疼痛感覚や,その他の分娩経過の上に著しい影響力を持つていることを認め,その精神活動の影響力をうまく活用して分娩経過をなるべく自然に,なるべく順調に導びこうとする方法を考えたものなのです.
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