新しい年を迎えて 新年にあたつて
新しい次の発展をめざして
橋本 道夫
1
1厚生省保健所課
pp.19-21
発行日 1960年1月10日
Published Date 1960/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202003
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保健婦さんと一緒に働きだしてから,もう十年の歳月が流れた.保健婦さんは私に教科書にもない実に血の通つた公衆衛生上の色々の問題をおしえてくれた.医師としての私が立ち入ることのできない患者の家庭訪問を通じて,病気をとりまく色々の家庭や,社会の問題の実態をおしえてくれたのは保健婦さんだといつても過言ではない.又保健婦さんの教育をいろいろの機会に手がけて来て,教える所もあつたかもしれないが,又私も大いに学ぶ所があつた.教育は確かに相互教育的な効果をもつものと確信している.此の保健婦さん達のもつている問題は最近相当の変化を見せて来たように思われる.話をしても,記録を読んでも研究発表をきいても大きな進歩をなしていることは事実だ.公衆衛生学会に発表される多くの研究が保健婦さんの努力の上に立つものが少なくない.保健婦学会をみても実に公衆衛生的な問題がとりあげられている.
しかし又一面,良くいつて公務員的,悪くいつて官僚的な色彩が極めて濃厚になつたことは否めない.その考え方が著しく型にはまり,又問題解決のための努力が余りにも依存的である点を感ずるのは私だけであろうか.年頭に苦言を呈して恐縮であるが,今や国をあげて国民皆保険を基盤とした医療保障の体制に向いつつあり,公衆衛生の在り方も新たに検討されつつある時,是非とも保健婦さん自らが次の発展段階を正しく見当づけられるのを念じて敢て筆をとつた.
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