社会の窓
神風タクシー
阿部 幸男
1
1読売新聞
pp.104-105
発行日 1958年5月10日
Published Date 1958/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201654
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交番の前を通ると,「昨日の交通事故」として,負傷者と死者の数が名記されているのがつい目につく.負傷者は4〜50名,死者は3名から5名ぐらいが普通である.毎日誰かが交通事故にめぐり会つて死んでいるのだが,それがいつ自分の運命になるかも知れないと考えると,思わずそつとする.注意して避けられるものならまだしも,個人的な注意だけで防ぎ切れないことも少くないのだから,病気よりも始末が悪い.
早い話しが脱線顛伏した電車にたまたま乗り合わせたら何とも仕方がない.それよりも,歩道を歩いている人間の後から突かける自動車まで現われている.都電の停留所である安全地帯に乗り上げるタクシーも出てくる.路端の店に突込むトラックもある.新学期を迎えて,新入生の児童を持つお母さん方の心配の一つは交通事故であるという話しもうなづける.児童の交通事故は目立つて増えてくることだから無理もない話しである.特に新入生の交通事故は多い.もちろん,児童に限らず交通事故の犠牲者の数は激増の途をたどつている.
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