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ハイライト
N
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X
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T
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O
pp.34-35
発行日 1957年12月10日
Published Date 1957/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201543
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癌の化学療法
日本の学問に大きな刺戟を与えているのは,世界各国との学問の交流であるがそのような意味で,続々と我が国で開かれた科学の国際会議は非常に喜ばしい.国際癌対策連合の化学療法に関する会合が日本で開かれたのは特に医学にたずさわる人々には嬉しく,又誇つてよいことである.化学療法の実験に動物実験の大切なのは論をまたないが,癌を動物に実験的にはじめてつくりだしたのは,山際氏等である.この伝統はよく病理学者の中にひきつがれて,吉田氏に至つている.我が国の実験癌病理学がよく外国の科学者の研究のいと口になつたことは,今回の会合の初日,アメリカのシエアー氏が述べられたところでもある.世界各国の癌療法に対する熱意は非常に大きい.癌の化学療法の成功を疑う人の数は,非常に少くなつたとは云え,その完全な成功までには,未だかなりの努力が払わねばならない.
この会合の発言の中にも,一つの薬が或る種の癌に効果があつたとしても,他の癌には全く効果がないことはよくある得りことで,尚手術,放射線療法の役割の大きいことを強調されたのであるが,我が国でつくられたナイトロミン,ザルコマイシンも含めて,癌の化学療法に対する希望は大事に育てるべきであつて,国民の関心と熱意が諸外国におとらないようでありたい.
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