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村から町から
pp.36
発行日 1957年12月10日
Published Date 1957/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201544
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患者の訴え
保健婦をヒロインにした小説「ヒマワリさん」の中に,在宅結核患者を訪問すると“何しにきた!”とばかり玄関払いをくわされる場面が出て来ます.又現実にもしばしば出くわすようですが,これを単に「患者の無理解だ」といえないものがあることをご存じでしようか.保健婦活動は「善」です.しかし動機が善であれば結果も必ず「善」でしようか.人間には水が必要です.しかし水を与えすぎると水死します.動機が「善」であつても手段をあやまると結果は「悪」になるのです.一人の病人を助けることが家族を不幸から守ることでなければならないのに,一人の病人を発見することにより家族を貧困と栄養不良と破滅に追いやる矛盾が現行の保健行政にあるのです.
結核予防法があります.医療保護法があります.福祉事務所があります.聞くだけ,読むだけでは誠に立派な法律と制度ですが,その実態は予算の不足から医療費や生活保護費の裏付の不充分な結核行政であつてみれば,福祉とは裏はらに保健活動だけが独走した上に,お役所のナワ張り主義から,クスリ代は管轄外だと放り出されては,まさに迷惑千万というべき実例が少くないのです.好きで病気をする人はありません.実情にそくした思いやりのある保健活動をされるよう保健所と,特に保健婦さんにお願いします(高知新聞11月16日)—痛い言葉であるが,誰かに抗議したくなりますね.
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