2頁の知識
海水浴の注意
重田 定正
1
1東大教育学部
pp.24-25
発行日 1956年7月10日
Published Date 1956/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201228
- 有料閲覧
- 文献概要
海水浴の注意が必要な対象は,海岸に住んでいない子どもたちであるから,ここにまず都会の小学校児童に対して行つた講話を掲げよう.
すこし暑い日には,海岸に住んでいる子どもたちは,学校がひけるのを待ちかねて,近くの海へ行つて泳いだり砂浜でねころんだりして遊びます.ですから夏休みになつてから,町の子が汽車や電車に乗つて海にやつてくると,まつ黒なからだの海岸の子どもから,町の子は青白いな,と馬鹿にされはしないか,と恥かしいのです.それで,負けてたまるものか,と朝から晩まで海につかつたり,浜で日にさらしたりすると.どんなことになるでしようか.……皮膚の弱い人が早く黒んぼうになろうとしてあせつて,強い日光に長い間さらされると,皮膚が赤くはれあがり,ぴりぴりと痛み,ときにはやけどと同じような水ぶくれができたり,熱が出たりすることがあります.ですから,海水浴の初めのうちは,はだかで日にあたる時間は短くして,なれるにつれて長くしていくのがよいのです.もし皆さんのおうちに小さい弟や妹がいたら,うすい肌着のまま海水につかるほうが安全です.……「君はこんど陽転したんだよ.」と先生に言われた人はいませんか.おやおや,海岸で黒んぼうになる話をしているのに,なぜツベルクリン反応の陽転といい出したのかしら.……陽転した人は,海岸で生活するにしても,友だちと同じように水泳や甲羅ぼしの競争をすると,忍びこんでいた結核菌があばれ出しますよ.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.