特集 慢性疾患—明日の公衆衛生のために
腎臓病の食餌療法
芦沢 千代
pp.108
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201185
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慢性の場合 食餌療法,適度の安静,必要のある場合には薬餌療法を行いますが,何にしろ慢性腎炎の時期は長く,病症も極く軽いものから重いものまで種々の状態があり,その食餌の具合はその場合その場合で緩厳宜しきを得てゆかなければなりません.食餌療法は先ず庇護療法を行います.庇護療法とは腎臓を刺激する食物を極力さけることです.即ち病気になつた腎臓が排泄しにくいもの(例えば水分,塩分,蛋白質の分解物)を含む食物をなるべく制限することです.私どもが生命を保つてゆくために食物を摂ります.この食物中に含水炭素,蛋白質脂肪の3栄養素と各種ビタミン塩素が含まれていますが,この中含水炭素(米,麦,芋類等)と脂肪(植物油,動物油)は体内で燃焼されて炭酸ガスと水になつて腎臓をわずらわさずに排泄されます.それ故腎臓病には含水炭素,脂肪分は無害な食品でありますので安心して用いられます.蛋白質(獸鳥肉類,魚介類,卵類,豆類)は体内で利用されたとき最終の分解物は腎臓から排泄されますので腎臓に負担をかけ,その上腎臓の機能が衰えてこの分解産物を充分に排泄しきれないことがあり,これが体内に溜つていろいろの障害をおこします.それで蛋白質性の食品は腎臓病には有害な食品でありますが,これはまた一方に生命保持には欠く事の出来ない大切な栄養素でありますので体重1キログラムにつき1日1g,1日50〜60gはとります.病状により1日70g位摂つてもよいこともあります.
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