2頁の知識
高血圧病とビタミンC
福田 篤郎
pp.48-49
発行日 1955年8月10日
Published Date 1955/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201003
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ビタミンCといえば血管を丈夫にするビタミン,出血を防止するビタミンといつた考えから高血圧病,特に脳溢血とは密接な関係があるかの如く想像されますが,事柄はそう簡単ではありません.ビタミンCは結合組織中の膠原纎維の形成に与り,C欠乏時には結合組織のゆるみから出血性傾向がみられることは確かですが,それだからといつてすぐ脳の動脈が破綻するわけではありません.高血圧病の大部分は中年以後に発生する老人病の一種と考えられ,高血圧病と血管の老化,即ち硬化とは不可分の関係にあります.「人は血管と共に老いる」といわれる如く血管の硬化こそ最も重大な問題でしよう.さて血管の硬化ですが生れ落ちてから年ごとにその度を増し,40才前後から特に急速に進行します.この様な避けられない硬化は主として動脈の中層の弾力繊維にカルシウムが沈着して来るためで,従つて動脈の弾力が衰え硬くなるのです.又血液の流れに直接ふれる動脈の内膜にも老化退廃の現象が現れます.内膜は増殖して厚くなり遂に変性して硝子様になり,細い動脈では内腔も狭くなるため血行が著しく阻害されます.一番問題になるのはこの内膜の変化で,これは脳とか心臓或は腎臓といつた最も大切な器管の動脈に好んで現れます.
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