講座
高血圧病の疫学
福田 篤郎
1
1千葉大
pp.32-36
発行日 1956年1月10日
Published Date 1956/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201095
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伝染病でもない高血圧病に疫学とは少しおかしいが,この病気の発生情況やその支配因子を実際に検討するという立場として理解して頂こう.血圧上昇にこ関するむつかしい議論は別として,世の中にこの病気がどの様に発生しているか,ということは一般の人にとつても関心の高いことであろうし,又保健事業にたずさわる者にも大切なことである.ここに高血圧病とは所謂本態性高血圧症といつて,腎臓その他の病気がもとで血圧が高まつて来るのとは違つて,特にこれといつた器質的疾患がなくて高血圧を初発症状として始まるものをいうのであり,その意味では体質病或は遺伝病とも考えられる.然し後で述べる様に年令の進むと共に,特に中年以後に多数の者に現れる現象でもあり,その見方からすれば老人病或は環境病ともいわれ得るものである.
高血圧或はそれに附随する脳溢血が屡々或る家系に集積してみられることは,誰れしも耳にすることであり,両親が中気で亡くなつた者は自分も同じ運命に遭うかと心配するものである.もしこの遺伝が明白に高血圧の発生を支配するならば高血圧病の疫学上極めて重大な事といわねばならず,対策も専らそれに基いて行われねばならない.さて本病が一般に遺伝の法則に従つて発病することを統計的根拠から始めて主張したのはドイツのWeitz(1923年)であります.
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