2頁の知識
日本の:結核の実態
田中 正一郞
pp.44-45
発行日 1955年5月10日
Published Date 1955/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200952
- 有料閲覧
- 文献概要
ここ数年の間に,日本では結核で死亡する者が激減したことは衆知の事実だが結核療養所は依然として満床であり,保健所や病院をおとずれる患者はあとを絶たない.死亡者が少くなつただけ患者はたまったのさ,と簡単にかたずける向もあるようだが,実態はしかし簡単には割り切れそうもない.しかし結核患者が果して何人いるか,その患者が年々どの位治り,どの位新しく発生しているか,さらにはどのような年令層,どのような社会環境のものからの発病が多いかなどを明らかにしなくては,本当の対策は建てられないというので,昭和28年,29年の両年にわたつて,世界でもはじめての試みである全国民を対象とした結核の実態調査が,厚生省を中心として各都道府県学界の協力のもとに実施された.
昭和28年には,全国に結核患者は何人いるかその分布はどのようになつているか,どんな医療を必要とするものがどの位いるかなどのいわゆる一時期における断面の調査が行われ,29年には患者は1年たつとどのように経過するか,ないしは新発生はどの位,どのような層から出てくるものかという調査が行われた.
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.