講座
疫痢の症状と診断
森重 靜夫
1
1東京都立駒込病院
pp.22-24
発行日 1954年7月10日
Published Date 1954/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200766
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まえがき
疫痢の症状と診断について記す前に,疫痢について一般的のことを記す方が判り易いので次に簡単に記すこととする.
疫痢という名称は,現在でもひろく一般に使われているが,嚴格にいえば疫痢という名称は学問的な病名ではなく,疫痢は赤痢(或は劇性赤痢)というべきものである.然るに何故これを疫痢といつているか.それには理由がある.即ち,疫痢というものについては,その本熊に関する論爭が昔からおこなわれ,今日もまだ総ての人が納得するだけの説明がついていないが,要するに小兒が赤痢菌に犯されて発病するとき,その中のあるものは,一般に見られる赤痢患者の症状と異つて,異常反応を起し,神経系や循環器系に強い障碍を起して重篤な状態に陷ることがあつて,その場合に疫痢というのである.即ちこれは小兒赤痢に現われる症候群の名称で,独立した病気とはいい難いのである.從つて,赤痢菌に犯されないで,この疫痢の症候群と同じような症状を現わす場合には疫痢とはいわず疫痢樣症状ということになる.然しこの考え方については一部には反対の論者もあるが多くの人は上述のように考えている.
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