講座
公衆衞生と藥
酒井 威
1
1東京都衛生局予防課
pp.25-31
発行日 1954年7月10日
Published Date 1954/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200767
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1.蜂蜜
春の盛りから初夏にかけて,梅桃櫻を始め,草花が百花遼爛と咲き競い,人の目を楽しませてくれるばかりでなく,夫々の芳ばしい香りと,不思議な程に鮮やかな自然の色彩とで,蝶や蜂を呼び誘う.蜜蜂が集めた蜂蜜は,昔から洋の東西を問わず高級料理に賞用され,食膳をにぎわして今日に至つている.さて,嬰兒も喜ぶこの蜂蜜は,最新化学のメスで解剖し,分析をして見ると,意外にも,極めて秀れた公衆衛生上の薬品であることが,明かにされた.
まず一番含量が多い成分は,果糖36%葡萄糖35%庶糖1.4%である.葡萄糖は衆知の如く,筋肉活動のエネルギー源であり,又体内の到る所にグリコーゲンとして貯臓され,心臓筋肉に対しては,強心力を与える.果糖は,他の臓器によりも遙に多く主として肝臓でグリコーゲンに同化され,肝臓の大切な機能の原動力となる.肝・心・腎臓の機能保持は,健康維持の基本である.
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