特集 赤痢(Ⅱ)
疫痢の治療
内山 圭梧
1
1都立駒込病院
pp.28-31
発行日 1954年8月15日
Published Date 1954/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201440
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疫痢の治療については従来多数の術式やら方針などが発表されており,その治療成績も報告者により甚だしい差がある。而して甲の報告者が宜しいという方法を乙の人が追試をすると仲々一致した成績が得られないというのが実状の様で,現在に於てもすべての人の見解が一致した治療方針が無いと云つてもよいのではないかと思われる。今から30年程前にヒマシ油と洗腸とが採用され,医者にかかる迄に先ずヒマシ油を与える様にと注意宣伝され,その風習は最近まで持続し小兒が発熱,下痢等あれば早速ヒマシ油を投与することが俗間に行われておつた様である。当時の疫痢の致命率は50〜70%にも及ぶ高いもので正に子供の命取りともいうべきものであつたが,その後間もなくこの様な治療法に対する批判が現われて来,先ず洗腸無効或は却つて有害だという説も出て来て,この方は割合に早く行われなくなつた。その代り食塩水の皮下注射が流行して来たが当時はまだ今の様に脱水症状とか電解質とかいうことは問題にされず,水分の補給は専ら毒素を稀釈して体外に洗い出すということと循環障碍に対する対策として用いられたのである。之と相前後して5%葡萄糖液,リンゲル氏液等も広く使用される様になつた。
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