特集 老人問題と公衆衛生
高齢化社会の社会保障
江見 康一
1
Kohichi EMI
1
1帝京大学経済学部
pp.620-624
発行日 1986年9月15日
Published Date 1986/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207333
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■加速化する高齢化の進行
昭和60年の国勢調査の速報によれば,65歳以上人口(老年人口)の総人口に占める比率は10.2%と推定されている.昭和45年に,7.1%と7%を超えて高齢化社会の仲間入りをして以来,50年=7.9%,55年=9.1%,60年=10.2%とその進行は急ピッチである.比率の増加は,もちろん絶対数の増加であり,第二次大戦直後の昭和22年に375万人であった老年人口は,今や1,240万人と3.3倍にもなっている.昭和45年と60年とを比べても,その間の人口増加1,636万人のうち3割は65歳以上と増えているのである.
老年人口の増加は,経済的には少なくとも次の二つのことを意味する.一つは,仮に65歳で定年退職し,あとは年金生活をするものとすれば,それまでの働いて扶養する立場から扶養される立場に移ることになる.だから老年人口の増加は,社会全体の扶養・被扶養の関係に影響を与える.このことは公的年金の財政を考えればわかりやすいであろう.年金財政は,保険料を拠出してくれる人数(分母)と,年金を受け取る人数(分子)との関係でもあり,この分母・分子の関係(成熟化率と呼ばれる)は,高齢化によって変化する人口問題の投影でもある.端的にいえば,高齢化が"老若関係"に新たな問題を提起することになる.
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