保健婦さんへの言葉
眞の幸福をもたらすために
羽仁 說子
pp.10-14
発行日 1951年4月10日
Published Date 1951/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200062
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あなたがこれから職業を選ぶうしたら何を選ぶか,と問われたので,私は,即座に,保健婦と答えたことがある。
世の中に,眞の幸福をもたらすために,一線で働くのは,教育者う保健婦さんだとおもう。人間が健康に生きよう,勉強しよういう意欲がなければ文明というものはなりたたない。ところが,ながいあいだの封建的な生活の闇は深く,身分というものにしばられて,仕方がない,仕方がないと萬事をあきらめていた習慣が強く,いまだに何事をも運命のせいにしてあきらめる。そして,その上に,身分というものが經濟的な意味をもつているのだから,貧しいということにしばられて一そう動きがうれず,ますますあきらめにおちいつてしまう。そのいちばん下敷になつているのが生活である。そうした暗い生活のなかからあらゆる非文明が生れて來るのである。因襲というか,迷信というか,あらゆるタプのはびこつたじめじめした生活のなかから不健康の生れるのは當然であり,最近,やかましくいわれている青少年の不良化,性的不道徳というようなものもそこから生れているのである。
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