特集 患者の‘訴え’の底にひそむもの
患者の訴えを見えなくしているもの—看護者側の問題として
高橋 恵子
1
1東京都立梅ヶ丘病院
pp.1257-1263
発行日 1982年11月1日
Published Date 1982/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922895
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私の勤務する病棟では日ごろ,自分の要求を言葉で表現できない患者によく出会う.これらの患者は,単に言葉で表現できないばかりでなく,言葉の認知が低く,自分が何を要求しているかすら自覚できないほど発達が遅れ,生活習慣の未自立など障害の重い状態にある.それらの患者から示される行動が,果たして自分の要求を訴えているのかどうかすら,はっきりとらえられないことも多い.
以下で述べる最初の事例,U君の場合,外見的には感情表現が乏しいが,顔つきは利口そうに見え,振る舞いが反復的で,言語指示にあまりにも簡単にすぐ反応してしまう患者であった.そのため看護者は伝えたことが理解されたと思い,分かり合えるのではと考えて,コミュニケーションをはかることを試みたが通じ合えず,結果的には嘔吐という問題行動を意識させることがたいへん多かった.その時U君が何を考え,どんな気持ちでいるのかを確かめることがたいへん難しく,いつの間にか繰り返される問題行動のみに目がいきがちとなった.
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