特集 患者の‘訴え’の底にひそむもの
‘問題の患者’と‘手のかからない患者’
大津 潤子
1
1日本赤十字社医療センター7階東病棟
pp.1251-1255
発行日 1982年11月1日
Published Date 1982/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922894
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はじめに
あらゆる看護場面においていえることであるが,臨床看護の中でも,私たち看護婦は,患者中心の看護,あるいは時間的な経過の中で変化してゆく個々の患者のニードにそった援助を実践しようと心がけている.しかし実際には,時間的制約の中で種々の業務に追われ,医師の指示を正確に実践することや診療の介助に看護婦の時間の多くを費やしている.そして一方,心理的に不安な状況にある患者や精神的に苦しんでいる患者は,いつしか‘問題のある患者’あるいは‘うるさい患者’であると看護チームの中でみなされ,看護婦の接する時間が短くなっていくことも少なくない.
患者のニードを考える場合,医学的側面からとらえた身体的ニードは看護婦にとって把握しやすい.それが,体温,脈拍,呼吸,血圧など数値でみることのできるものはなおさら容易であり,看護婦個々による把握の差もほとんどないと考えてよい.患者の身体的側面に対する情報は医師から得られることも多く,さほど問題とならない.しかし,患者の精神的・心理的な状況,あるいはニードの把握に関してはどうであろうか.これらのニードに対する援助は,看護婦の役割の1つであるわりには,十分に実践できているとは言い難い.
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