特集 患者の‘訴え’の底にひそむもの
患者の訴えとナースのアプローチについて考える
中尾 アヤコ
1
1千葉労災病院看護部
pp.1240-1245
発行日 1982年11月1日
Published Date 1982/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922892
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はじめに
私が乳房の手術を受けて,抜糸をしてもらった日のことである.糸を抜くチクッとした痛みが2回,3回と重なるうちに,‘やはり私の乳房はなくなってしまったのだ’という思いがこみ上げてきて,思わず涙がポロポロとこぼれ,涙がこぼれたことに触発されて,こらえ切れずに泣き出してしまった.皮膚の痛みを通して,心の痛みに耐えかねたのである.
しかし,それは若い看護婦さんには不思議なことだったようで,‘痛いんですか’と聞く声が不審そうであった.婦長さんがそれを制する気配があって,やがて処置がすむと,みんな黙って病室から引き揚げて行った.
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