特集 患者の‘訴え’の底にひそむもの
独特多様な症状表現をする肺結核患者とのコミュニケーションを考える
下田 きみえ
1
,
矢部 寛子
1
1国立療養所村山病院2病棟
pp.1247-1250
発行日 1982年11月1日
Published Date 1982/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922893
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
近年,結核性疾患は著しく減少している.しかし現実には,治療抵抗性肺結核患者がなお多数存在している.更に結核軽視,化学療法の過信の傾向が,成人重症結核の発生を促し,その一部は治療抵抗性となり,社会復帰が困難となる.当院においては1981(昭和56)年7月1日現在,このような患者が結核病棟の42%を占めており,しかもそのほとんどが入院期間10年以上で,随伴する全身症状に悩まされながら限られた行動範囲での療養生活を余儀なくおくっている.
このような患者は予後に期待を持てず,精神的,身体的,社会的にその不安は大きい,国立療養所精神衛生研究班の報告によれば,‘こうした患者の心理状態は,医療従事者の言動に大きく影響を受け,その心の明暗が病状の推移に関与する’という.看護にあたる私たちは,患者の心理的不安を募らせたり病状の悪化をきたさないようにしなければならない.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.