プリズム
娘と看護婦の狭間
三浦 規
1
1聖マリアンナ医科大学付属病院看護部
pp.441
発行日 1987年5月1日
Published Date 1987/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921707
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95年の生涯を終えようとしている母をさする手から氷の冷たさとはまるで違う“心”にしみとおる冷たさがじーんと伝わってくる.
「婆ちゃん,飯食うべ」と八戸弁しか話せない母に慣れない訛りを一生懸命まねて話し掛けている看護婦は,娘として本当にありがたく,母も至って御機嫌だった.この行為は長谷川式スケール10点前後の母に対し,看護婦として当然の温かい心遣いであると,始めの頃は微笑ましく感じていたが,「腹減ったか,水っこ飲むべか」というような対応を聞いているうちに,娘の気持ちとしては,「母はもっときちんと話しても分かるのに,八戸弁でもそんな乱暴な言葉じゃないわよ」と,つい口を出してしまった.看護の中の気くばりとはなんと難しいものであろうかと思う.
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