喫煙の生理・衛生学・6
喫煙と虚血性心疾患
浅野 牧茂
1
1国立公衆衛生院生理衛生学部
pp.93-96
発行日 1982年1月1日
Published Date 1982/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919454
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我が国の虚血性心疾患死亡率
喫煙習慣と関係の深い循環器系成人病としては,まず虚血性心疾患を挙げることができる.これは粥状硬化(アテローム硬化)が基盤となった冠状動脈の狭窄や閉塞によって起こる疾患で,①労作性狭心症(前回参照),②心筋梗塞,③中間狭心症,および④無痛性虚血性心疾患(虚血性心電図所見を有し症状のないもの,および慢性心不全,心房細動,心ブロック)が含まれる.特に,致命的な場合の少なくない心筋梗塞は重要である.
虚血性心疾患(ischemic heart disease, IHD)は心冠疾患(coronary heart disease, CHD)とも呼ばれ,脳血管疾患および悪性新生物とともに国際的にも高い死亡順位を占め,3大死因のひとつとされている.しかし,我が国のCHDについてみると,最近(1975年前後)の世界主要33か国の標準化死亡率国際比較では,男女とも最も低い位置にある.1)男子では最高のスコットランドで304.8(人口10万対)に比べ,我が国は43.4で約1/7,女子でも同様にイスラエル142.4に比べ25.5で,約1/6に過ぎない.
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