喫煙の生理・衛生学・9
喫煙と中枢神経系
浅野 牧茂
1
1国立公衆衛生院生理衛生学部
pp.453-456
発行日 1982年4月1日
Published Date 1982/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919531
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喫煙の精神作用の主役はニコチン
精神活動も身体活動も,いずれも中枢神経系の働きによって統御・調節されていることは,いうまでもない.常習喫煙者は喫煙によって‘イライラ’が治まる,とある人は感じ,また‘ボンヤリ’がさわやかになる,とある人は感じ,これを喫煙の効用と考えている人々もいる.同一の人でも場合によって両方を交互に体験することもあり,喫煙によって精神は興奮するのか鎮静するのか,ひと口には決め難い.経験的には,両方の効果を喫煙は及ぼすと考えられている.1)
喫煙自体は極めて複雑な行動であり,ある種の感覚と享楽の状態が,生体の様々な生化学的・生理学的過程を背景として成り立っている.2)喫煙の習慣は,まず典型的には友人の影響による習得の例に見るような杜会的強化が土台をなすとする,社会的学習モデルにより説明される.
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