グラフ
過疎の地に息づく「草の根」の訪問看護—国立療養所志布志病院を訪ねて
二渡 久良
1
,
岩下 守
,
本誌
1国立療養所志布志病院
pp.1092-1097
発行日 1981年10月1日
Published Date 1981/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919356
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
国立療養所志布志病院は九州の南端,新大隅開発計画で話題となった志布志湾に面し,その周囲を白砂青松の美しい自然に囲まれた地にある.1952(昭和27)年3月,結核の療養所として開設されたが,その後結核の減少,慢性疾患や老人患者,あるいは交通事故による急患の増加という疾病構造の変化に伴い,次第に一般病床が増え,現在では結核50,伝染病37,一般150床となり,大隅半島唯一の公的(国立)医療機関として住民から親しまれ,頼りにされる地域医療の中核病院となっている.
温暖な気候,豊かな自然の風土,そしで素朴で人情味厚い人々の住むこの地方は,かつては‘陸の孤島’と呼ばれてきた僻地であり,全国でも有数の過疎地帯でもあったが,最近ではかなり開けてきている.しかし,過疎化により,老人人口が増え,脳卒中が多発し,救急でかつぎこまれる患者や後遺症でリハビリテーションを必要とする患者,あるいは家庭でも家族の世話や介護をろくに受けられない寝たきり老人が多い.そのような老人を対象に1972年9月から,病院の看護婦による訪問看護が始められた.当時,地域看護とか訪問看護の重要性,必要性が叫ばれ,いくつかの地方自治体病院や民間病院で先進的な試みがなされてはいたが,その実践はまた模索と試行の段階でしかなかった.そのような時期に,全国に先駆けて,しかも過疎の僻地にある国立の病院で訪問看護の実践が始められたのである.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.