医療の周辺 社会学(家族関係論)—老人と家族・6
過疎地の老人と家族
奥山 正司
1
1東京都老人総合研究所
pp.324-325
発行日 1981年4月1日
Published Date 1981/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207442
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ここでは,過疎地の老人と家族について,素描したい.
一般に,農家と都市家族の老人を比較すれば,農家の老人は,都市家族の老人に対して,①家族との同居者が多いこと,②世帯の総収入がやや高いこと.③就業の日数もそれほど長くないこと,④家計責任者の割合も比較的少ないこと,⑤近所づきあいが強く,地域社会との交流が深いこと,などが挙げられ,農家の老人は,都市家族の老人より,伝統的なイエ意識に守られてはるかに恵まれていると考えられる.しかし,これは,あくまでも農家老人に対する全体的,平均的な見方であって,これをもう少し深く追求してみると,そこには極めて千差万別の老人像が浮かんでくる.その一例を示すために,これから紹介するのは,筆者が数か所の過疎地に実際に入り込んで何人かの老人に直接あたって聞き取った事例の中のひとつである.それをとおして,老人のイエからの引退過程と老人問題について若干触れてみたい.
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