マイ・オピニオン
障害者と医療—〈かやの木〉の取り組みに思う
鈴木 仁史
1
1大宮皮膚科
pp.1089
発行日 1981年10月1日
Published Date 1981/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919355
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埼玉県与野市に‘かやの木作業所’という小規模授産所がある.障害者を持つ親の運動で出来た,どこへも行き場のない在宅障害者中心の働く場である.人口7万の与野市を中心に,約20名の障害者が毎日通ってきている.障害による選別はされておらず,全介助のCPの人もいる.2年前に開所した時,20年もの在宅者がその中に含まれていた.職員が通所を勧めに行った時,その家の近所の人たちは,障害者がいることを全く知らない状況であった.裏口から車で作業所へ連れて行こうということになったが,まず洋服も靴もないのである.寝巻きのみの生活が長年続いていたからである.
県の重度障害者訪問活動を通して,私もこのような人たちに何人も会っている.生活状況が放置状態であるから,医療など考えられていない.健康管理は全くされておらず,高血圧で高度の浮腫のまま放置されていたり,単身で失禁状態のまま寝ていたり,けいれん発作が頻発しているのに,親は治療の必要性すら知らずにいたり…….‘かやの木’の取り組みにより,1人1人が掘り起こされ,社会に触れていくようになる,健康にも目が向けられ,必要な医療も行われていく.
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