巻頭言
不幸な事件と被害者について思うこと
山上 皓
1
1東京医科歯科大学難治疾患研究所社会医学研究部門
pp.674-675
発行日 2000年7月15日
Published Date 2000/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902245
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精神障害者による不幸な事件が報道されるたびに胸が痛みます。私は,25年前に司法精神医学研究の道に入り,我が国の触法精神障害者処遇制度の欠陥をよく知る立場にあるうえ,8年前に開設した犯罪被害者相談室の活動を通じて被害者の方々にお会いすることがよくあるので,思いがいっそう複雑になるように思います。
犯罪被害者相談室に来られる被害者・遺族の方々の中には,被害の衝撃から立ち直ることができず,生活上の困難も加わって,孤立無援の状態で長く苦しんでいる方々が少なくありません。犯人が精神障害者であるため責任が問われないような場合には,理不尽な犯行への怒りの向けようもなく,その上,加害者を庇う関係者の言葉などによって幾重にも傷つけられ,癒しがたい傷を負っていることも多いのです。
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