とびら
精神障害者の事件に思う
宮崎 和子
1
1東京都立中部総合精神衛生センター
pp.781
発行日 1987年12月15日
Published Date 1987/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103913
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猛暑の続く去る7月25日,川崎市の某教会で,刃物を持った40過ぎの男性が,夏休み合宿中の小学生の寝込みを襲い,数名に重軽症を負わせたという事件は記憶に新しい.結局,その男性は,かけつけた警官にその場で射殺された.この男性は,教会近くの飲食店で従業員として働いていたが,精神分裂症でこれまでに,2,3回入・退院を繰り返し,この5月から外来受診をしていなかったようである.いろいろな意味で痛ましい事件である.
精神障害者が地域社会の中で働きながら,単身生活を送っていくことは並たいていでない.服薬管理はどうなっていたのか,悩みごとや生活相談する人がいたのか,友人とのつきあいは,病院や保健所とのかかわりはどうなっていたのか,等々気になる点ばかりが胸を刺す.そして事件の報道内容は,障害者の社会参加をより遠ざけ,またいっそう,精神病への偏見を募らせるのではないかと懸念する.
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