カラーアトラス 褥創・6
大転子部の褥創
木村 哲彦
1
1国立身体障害者リハビリテーションセンター第一機能回復訓練部
pp.606-607
発行日 1981年6月1日
Published Date 1981/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919253
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大転子部の褥創は,成書にも多くの記載があるように,仰臥位での仙骨部,坐位における坐骨結節部と並んでしばしば見られる.これは,側臥位の際に一番圧力の集中する部分に大転子が存在し,骨隆起も著しいためと考えられる.軟部組織の状態によって表皮側の壊死にとどまる場合,あるいは骨組織(大転子)にまで至るもの,あるいは中間までのもの,といくつかの程度に分けることができる.ここに供覧する写真は,表層にとどまるもので,実際の肉芽の露出している部分は30mmφ程度であるが写真で見られるように皮膚の変色した不健全な部分,すなわち,圧迫による循環障害の結果このような様相を示すに至った部分は120mmφに及んでおり,その影響が極めて大であることを示している.このように,たとえ表層型であっても極めて深刻な循環障害が周辺の部分に存在する際には非常に難治性であり,さらに一度瘢痕性の表皮で修復されていても,非常に小さな刺激で再発してしまう脆(ぜい)弱な組織であることを忘れてはいけない一見したところでは火傷の瘢痕治癒過程と同様の経過をたどるが,その実,表層より下にある組織の状態はより強い障害を受けているものであり,より一層の保護をしなければならない.表皮で覆われてからやや健康な状態に回復するまでには,おおよそ1か月以上を要するので,注意の上にも注意をする必要がある.
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