看護の潮 老人を考える
アメリカの老人福祉—ナーシングホームでの看護経験
小林 冨美栄
1
1東京女子医大病院
pp.36-39
発行日 1967年12月1日
Published Date 1967/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913434
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社会における看護のニードとして家庭にいる病人と,病気の老人のことがあげられる。この両者が重なっている時には多くの場合,私どもは目をおおって現実の場面をみないことにでもするより方法がないとさえ考えられる。もちろんこれは看護婦が単独で解決すべきニードではないが,社会的な問題となる前に,否すでに社会問題であるが誰かが声をあげなければならない。そして,このような現実に他よりも早く,また切実に当面するのは看護をする私どもではないだろうか。昭和36年に厚生統計協会が発行している「厚生の指標」の特集,社会福祉の動向の中に提示された“日本の老人”を読んで,私は前に述べたようなことを真剣に考えなければならないと思った。
昭和28年に初めて留学したアメリカの大学で“成長と発育”という科目の担当教授から,日本の老人は家長制度によって守られていることをはじめとして,衣類まで老人にふさわしい色・型があることを指摘され,醇風美俗だといわれた。戦後旧来の家族制度は急激に崩壊し,今までは子どもたちに依存していくことを計画に入れてきた人にとっては,自己防衛の準備がないままに霜夜に放り出されたもののような不安と恐れ,必死のもがきの場面などが予想される社会になっていたので,教授の指摘はちょっと時代のずれがあると思った。
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