特集 実践のなかでの体験と学び
看護婦としての自己形成の軌跡を探る—臨床実習における学生の体験と学びを通して
近森 芙美子
1
1横浜市立市民病院看護部
pp.691-698
発行日 1978年7月1日
Published Date 1978/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918435
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はじめに
かねてより私は,看護こそ最も現代的な思想であると考えているひとりである.それはまず,看護学が患者さんと私たちとの相互のかかわりを重視する現象学であるという点において.そして,人間を部分的にではなく,心身をトータルにとらえるという,その視点の新しさにおいて.さらには,患者さんの生命の動的平衡に注目し,それを正しい方向に援助するためには,社会環境や自然環境のいわば全体性に目をくばらなければならない,その,学問の視野の広がりという点において.そして看護こそ,これまでの硬直化した,オーソドックスな科学中心の学問体系に対して,異議申し立てのできる,生命的(ヴィタール)な,新しい知の体系であると考えるからである.
したがって看護婦の人間形成は,このような看護の思想が体系化され,学問化された看護学の,その思索と実践の中でこそ行われなければならないと,私は常々考えている.もし看護学が,人間の内面性の豊かさへの追究と,他者への共感をはばむような,ひからびた内容のものであるなら,おそらくこれからの新しい世界観の中での,学問としての在立価値はないであろう.
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