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看護の専門職化に伴う役割・業務の問題を,アメリカと日本で比較しながら検討してきたが,その中から,今後日本で実践レベルの向上と効率化を図るために改善されていくべき問題がいくつか出てきた.それらの主なものは次のように要約されよう.
1)現場のリーダー不足への対策 2)基礎看護教育の充実,一貫した(段階的・ 体系的)継続教育プログラムの準備 3)教育担当者のレベルアップ(養成) 4)理論と実践をつなぐ努力の仕方 5)体系的・実践的研究の積み上げ 6)継続ケアのための組織化 7)マンパワー獲得のための条件整備(質的・ 量的) 8)人材の適材適所の活用方法 9)職場のチームワークの確立(看護内部,他 職種間との) 10)業務の整理と役割配分の検討
看護の専門分化が進行する中で,常に問い直されていかねばならない問題として,次のようなことが考えられる.
1)看護の専門的性格とその発展をどう考えればよいか
それは看護の領域と援助方法が,他職種からの完全独自ではなく,相対的独自な領域(生活過程への援助)と,相対的独自な方法(より健康的な生活を目指しての生活の仕方やそのための条件整備の援助)を持つことである.また,看護の機能は,他職種の支えの中でより有効に発揮され,また他の各職種間との共同関係の中で,看護の専門性がより発展的に育てられる面があるという認識に立って,進めていく必要があろう.
2)専門分化のあり方は何を中核として考えていけばよいか
専門分化の方向には,対象特性別,援助方法別などが考えられるが,看護の本領(生活過程への援助)に照らして,業務中心ではなく,対象への援助の統合化という視点に立って,各援助を看護過程に位置づけてみた時,疑問が残らないような分化の仕方でなければならないと考える.そのような視点に立って,どのように専門分化されるべきかは,その時代と社会的要請に合わせて,看護者が主体的に方向づけていくのであれば,定式化の必要はないし,困難ではないであろう.3)ジェネラリストとスペシャリストの必要性と両者の関係はどうか
専門職を大別してその役割別にみると,ある特定領域に対して専門的な知識と技術をもつプロフェッショナル(スペシャリスト)と,特定領域ではないが,多くの領域を全体的にカバーでき,総合的な問題把握に基づいて,対象を多面的に援助していく役割をとるプロフェッショナル(ジェネラリスト)の両方が必要である.施設内看護ではよりスペシャリストを,地域ではジェネラリストをより多く要するかと思われるが,両域においてスペシャリスト,ジェネラリストの存在は,それぞれに必要である.その人材養成と効率的活用が望まれる.
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