ナースの作文
深夜勤務,他
村本 三和子
1
1石川県共陸病院
pp.66-70
発行日 1960年11月15日
Published Date 1960/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911206
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「御苦労さん別に変つたことは?」友の笑顔で一安心する。「特別の異常はないけれど25号室のTさん,すごい咳で10時に頓服飲んだけど止まりそうにないんや,あんまりひどい様だつたら注射をして上げてね,それにいつもの時間投薬と,朝は採血2名,十二指腸ゾンデがあるからお願いします。」トントンと階段を降りて行く足音が消えると,急に1人ということが痛感される。もう一度申し送り簿を確め異常のないことを悟るとホツトする。
今日で深夜3日目,2日迄はどうやら元気もあるが3日,4日となると不眠がたたつて,頭の廻転がスムースに行きかねる,今日も勤務を終つて寄宿舎に帰り,戸を閉め切り大きなハンカチで目をおおつて床に着いたのが9時,ところが例によつてなかなか眠れない。やつとうとうとしだしたのが10時半,10分も寝た頃か電話の大きな音で覚める。11時にどうやら眠くなり,ずいぶん寝た様な気がするが時計を見ると12時15分,1時間余りしか寝ていないのである。昼食を取りに来る人の足音,子供達の叫び声,自動車の警笛,犬の吠える声,ラジオの音等,音すべてに腹立たしさを感ずる。思いつ切り布団を頭からかぶり,耳を押えた。とうとう4時になり日勤者が帰つて来る。夕食をすませ,何となく時間を費す。8時である。「さあ今から寝ると3時間半寝られる」。又布団の中に飛び込む。「深夜用に地下室でも作つてくれないかなあ」。これは深夜勤の来る毎に思う。
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