環境とからだ・11
個体発生と環境
亀山 義郎
1
1名古屋大学環境医学研究所
pp.293-296
発行日 1975年3月1日
Published Date 1975/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917211
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環境が人間に及ぼす影響には成体への直接の影響のほか,親に及んだ影響が子孫に現れてくる場合を忘れてはならない.近年の急速な技術文明の進歩が人間の生活環境や生活様式に大きな変化をもたらし,これが生物学的にみて人類の生存に不都合な影響を与え,人類の将来に暗い影を投げかけていることは多くの科学者が指摘しているとおりである.現在の生活環境が,果たして現在生きている我々の生存にとって安全か否かは確かに重大事であるが,更に重要なことは,子孫に有害な影響をしわよせしないことである.
子孫への影響には,環境因子が母体を介して子宮内の胎児に作用して,その発生・発育に影響を及ぼす場合(個体発生への影響)と,親の生殖細胞(精子・卵子)に作用して,その中の遺伝子に及んだ影響が子孫になって現れる場合(遺伝的影響)のふたとおりがある.後者の遺伝的影響は次編‘環境と遺伝’で取り上げ,本編では,まず個体発生への影響を概説し,次いで人工的環境諸要因の胎児への悪影響を先天異常を中心に述べる.
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